遠くから見て,木に見たことのない花が咲いているなあと思って近づくと,

ふと見上げた初夏の昼下がり。
遠くの木に、どこか幻想的な光景が目に入った。淡くやわらかな色彩が、青空を背景にほのかに揺れている。
「なんだあれは…?」
まるで、見たことのない花が咲いているようだった。
知らない品種?季節外れの開花?それとも誰かが丹精込めて育てた珍しい植物?
胸の奥がふわりと高鳴る。気づけば足が勝手に、その木へと向かっていた。
だんだんと近づくにつれて、正体が見えてきた。
ああ、そういうことか。
ーーそれは、「ビワの実にかけられた紙袋」だった。
期待がほどける瞬間の、あのちょっとした照れ笑い。
だけどなぜか、気持ちはほんのり温かかった。
誰かが、鳥や虫からビワの実を守るために、ひとつひとつ丁寧に袋をかけている。
そんな優しさが、遠くから見れば花に見えて、心を惑わせたのだ。
花ではなかったけれど、そこには確かに、日常の中に咲く「人の手」の美しさがあった。